ホーム > 第65回地域農林経済学会大会

大会講演

10月31日(土)[14:45~16:55]

 とりわけ2000年代に入ってから、日本における中央と地方、都市部と農山村部との経済および社会インフラの格差が一層拡大している。しかし、政策は限られた財政予算を効果的に投入するという名目の下で、全般的な格差解消ではなく、「創意工夫」の発揮できる地方に手厚い支援を与えようとする「地方創生」策を進めようとしている。結局、そこから取り残された多くの「地方」において、中央・都市部との格差がさらに増大すると予想される。
 農林業が経済的・社会インフラ的に劣位におかれた「地方」の主要産業であることは今も変わりはない。生産条件の不利な地域でも農林業を基盤にして格差解消ができるよう、農(林)業の六次産業化が唱えられている。この方策は、生産面だけでなく消費面も巻き込んだ食農システムの革新という可能性を秘めているものの、他方でたんに地方間の競争を煽るだけで、結局は格差を生み出した社会背景から一歩も出られないという危険も孕んでいる。
 こうした近年の状況のなかで、地域農林業はどのような方向に舵を取り、どのような役割を担うべきなのか。それを考えるためには、「地方創生」への批判をスプリングボードとして具体的な方策を考えると同時に、より長期的・文明論的視野も必要となる。大会講演では、文明論的・理論的議論と実践事例報告を提供し、それらを往還する討論を通じて、格差拡大時代の地域農林業のあり方について検討したい。

コーディネータ(講演意図・解題):秋津元輝(京都大学)
講演①:「戦後農山村思想の転換点:新しい地域継承システムと地方創生」
 内山節(哲学者・立教大学元教授・NPO法人 森づくりフォーラム代表理事)
講演②:「真に必要な地方創生支援とは何か:西粟倉村での仕事づくりの経験から」
 牧大介(株式会社西粟倉・森の学校代表取締役)
総括コメンテーター:玉真之介(徳島大学)
ディスカッション