ホーム > 第70回地域農林経済学会大会

大会シンポジウム

テーマ「次世代に向けての地域農林経済学の再検討-地域農林業の現場の新たな捉え方─」

10月10日(土)[13:00~17:20]

 70回記念大会を迎え、記念大会恒例の「地域農林経済学の現場の捉え方」「現場を捉えるための地域農林経済学のあり方」の再検討を行う。新たな令和の時代を迎え、ポスト・グローバリゼーションやポスト・コロナの未来を見据えた、次世代に向けての再検討になる。

 「現場の新たな捉え方」として、これまで実験手法、マルチエージェントシミュレーション、社会実装型研究、アクションリサーチなどが紹介された。今回はビッグデータのマイニング手法に着目し、「AIを活用したシミュレーション」と「暗黙知の可視化・数値化」が紹介される。

 前者の広井・福田による招待講演[AIを活用したシミュレーション]は、地域農林経済学が分析の焦点を当てる現場(地域・地域経済)の30年後の姿を想定するものでもある。昨年度、10~20年後のポスト・グローバリゼーションの新たな価値観の下、「田園回帰」「地理的表示」などをめぐる今後の研究の重要性を論じた。本講演は、AIが示す日本社会の「持続可能シナリオ」として、田園回帰や農業・農村復興の重要性を強調する。

 会長講演[地域農林経済学が分析対象とする「地域」とは]と、上記の招待講演を受け、副会長の秋津・浅見を交えた4名を主体として、ポスト・グローバリゼーションの未来における地域農林業の現場の変容や、その新たな現場を分析対象とする次世代にとっての地域農林経済学のあり方(課題)をめぐる「ディスカッション1」を行う。

 後者の南石による報告1[暗黙知「匠の技」の可視化・数値化]は、地域農林経済学の特質である、「地域(現場の課題解決)への貢献」や「研究者と実践者の交流・切磋琢磨」の度合が高い研究の紹介でもある。社会実装型の1事例として位置付けることもできよう。

 さらに駄田井による報告2[課題への異なる視点からのアプローチ]は、同じく地域農林経済学の特質の1つである、量的アプローチと質的アプローチの補完関係や学際的分析、それらのための共同研究の重要性を論ずるものである。

 地域農林経済学の望ましいあり方を示唆するこれら2報告を受けて、実践者として報告1の研究に参加する若手稲作経営者の横田、企画副委員長の中村、編集委員長の河村、若手研究者の山下・本田・木原を交えて、次世代に向けた地域農林経済学会のあり方について検討するのが「ディスカッションⅡ」である。


1. 会長講演 北川太一(摂南大学農学部)            13:00~13:15
  地域農林経済学が分析対象とする「地域」とは─先行議論の整理と未来像─

2. 座長解題 辻村英之(京都大学農学研究科)          13:20~13:35

3. 招待講演 広井良典(京都大学こころの未来研究センター)
  福田幸二(日立京大ラボ)             13:40~14:10
  持続可能性の条件としての分散型社会システムと田園回帰・コミュニティー
  ─「AIを活用したシミュレーション」が示す30年後の農村地域─

4. ディスカッション1                     14:15~15:00
  ポスト・グローバリゼーションの時代における地域農林経済学のあり方
  ─「地域」の変容と新たな分析方法・課題─
  北川太一 福田幸二 秋津元輝(京都大学農学研究科) 浅見淳之(京都大学農学研究科)

5. 報告1 南石晃明(九州大学農学研究院)              15:10~15:40
  研究者と農業経営者の「共働」によるスマート水田農業モデルの構築
  ─農匠ナビプロジェクトによる暗黙知「匠の技」の可視化・数値化と技術継承支援─

6. 報告2 駄田井久(岡山大学環境生命科学研究科)         15:45~16:15
  質的研究と量的研究との融合の可能性─課題への異なる視点からのアプローチ─

7. ディスカッション2「次世代に向けた地域農林経済学と学会のあり方」 16:20~17:20
  南石晃明, 駄田井久, 横田修一(横田農場),中村貴子(京都府立大学生命環境科学研究科),河村律子(立命館大学国際関係学部),山下良平(石川県立大学生物資源環境学部),本田恭子(岡山大学環境生命科学研究科),木原奈穂子(鳥取大学農学部)